「ささやき」
君の細く透き通った声が耳を通る。
街が静まり、辺りは頼りない街灯と夜空の月明かりが僕らを照らす。まるで1つの舞台の様に。
短いけど動く度にサラリと流れる綺麗な髪、ツンと尖った鼻、白い肌、長いまつ毛と黒目がちの大きな瞳。とても美しい彼女だが、人と群れる事を嫌い、いつしか周りに人が寄ることは無くなった。
そんな彼女と唯一話すのがたまたま隣の席だった僕。特別仲良し、という訳ではないが他愛もない話をしている。彼女がクスクス笑うだけで辺りの空気が華やぐ。
マドンナがマドンナを辞退している謎現象だが、それでも彼女は気にしていない。嫌なものは嫌。それが彼女のスタンス。
4月にしては妙に暑い日だった。家族と出かけて帰宅後お風呂を済ませ部屋に戻ると一通のメッセージが来ていた。彼女からだ。何だろう、と確認する。
「20時に駅前来れる?」
昨日も学校で会ったのに何かあったのだろうか?僕はサッと準備を済ませ駅に向かった。
土曜日のこの時間というのもあり少し人は少なく感じた。
「ごめん、おまたせ」
「ううん、今来たところだよ。どうしたの?」
「えっと…ちょ、ちょっと場所変えてもいいかな。ここじゃちょっと」
「え?あ、うん、いいよ。どこ行く?」
「近くに小さい公園あったよね、そこ行こう」
彼女に従い公園に向かう。ブランコが2つと大人が登るには小さなジャングルジムがある最低限の公園。とりあえずブランコに座る。
キィ、キィと明らか重量オーバーなブランコからは悲鳴に似た音が奏でられていた。
「……」
彼女はブランコをゆったり漕いだまま俯いて黙っていた。本当に何かあったのではないだろうか。心配になり
「急にどうしたの?何か悩み事?」
「うん…と…」
ブランコを止め、ようやく口を開く。
「私ね、気がついたの。毎日学校で貴方に会い他愛のない話をして笑う時間がとても愛おしい。でも私は人といるのが嫌い。だけど貴方は違うの。なんて言うか…家族に近い感じ」
キュッと口を噤み、僕の耳を貸してと頼んだ。彼女に近づくと耳元でとても大切な言葉を告げた。
暗がりで表情は読み取れなかったけど、きっと僕と同じく耳まで赤くなっているだろう。
「 」
彼女の小さなささやきは僕の心に大きく響いたのだった。
4/21/2025, 2:23:35 PM