「ね、どこに行くの?」
「ん?」
「さっき言ってたじゃん…大好きな所あるんだけどって」
「それ言ったら面白くないじゃん」
「そうだけど……」
「そこに着くまでのお楽しみだよ」
そう言えば昔もそんな台詞聞いた事がある。
「ちょっと!!自転車の二人乗りは危ないんだよ!」
「んじゃあ歩くか?お前だけ」
その瞬間ガンッと何かを踏み自転車が少し跳ねる。
「いったぁーーー!」
「あははは」
「幼なじみだから何してもいいって訳にはいかないんだからね!!」
「していいに決まってんだろ?お、お……」
彼の脇をこちょこちょとすると
慌てて急ブレーキをかける。
「転んだらどーすんだよ!!」
「その時はあんただけ転びなさいよ、私降りるもん」
「お前なぁ……」
「私に痛い事させた罰!」
彼が笑顔になりながら自転車を降りると
そのまま後ろに座った自分の方を見る。
「何よ?」
「な、ちょっと良いとこ行くか!」
「え?どこよ?」
「ここから割と近いんだ!」
彼がまた自転車に乗るとペダルを漕ぎ始める。
「だからどこに行くの!?」
「言ったら面白くねぇじゃん!」
「懐かしい顔してどうした?」
「ん?昔の事思い出して」
「なんかあったっけ?」
彼女が助手席の窓を開けると一気に風が入り込む。
「昔もどこに行くか教えてくれなかったなって」
「ははは、そんな事言ったかな?」
「言ってたよ」
「海だよ」
「え?」
「お前と海見ようと思って」
episode 『どこ?』
3/19/2025, 11:25:22 AM