気力がない

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都会の夜景は汚い。高いビルと明るすぎるネオンライトで照らされて、酒とタバコと女の匂いを無惨にも漂わせている。
「まァた外見てんのー?」
ガラガラと雨戸を開けて同居人が顔を出す。手にはタバコとライター。
「別に。涼んでるだけ。」
ふーん、と興味なさげに相槌を打って彼女はスリッパに足を通す。隣でカチカチと音を鳴らせ、汚く濁った息を吐く彼女を横目に見ながら、私はもう一度アルコールを飲んだ。ゆっくりと躰を侵食する苦い後味が同時に脳みその機能も奪っていく。人生の一番の楽しみはビールと相場は決まっているのだ。
「眠らない街なんてさ、よく言うよねぇ」
思い出したかのように呟く彼女の声に瞼を開くとギラギラと集まる光が目の奥を痛いほどに突き刺す。目を背けるように隣を向けば、薄いシャツ一枚でタバコを吹かす同居人と目が合った。
「寝ないと健康に悪いのにね」
柔らかく空気を吸いそのヤニを赤く灯して、彼女は悪戯っぽく口角を上げた。
「...よく言うよ」
ぬるくなったビールは炭酸が抜けて美味しくない。
都会の夜景は臭くて汚いけど、嫌いってワケでもなかったりする。
[題:夜景]

9/18/2023, 11:51:06 AM