紅葉
ひゅう、と一陣の風が吹き抜け、公園のベンチに座る私の目の前にひらひらと一枚の葉が落ちてくる。上半分が紅く色づいたそれは本格的に秋が訪れたことを知らせてくれた。
「何見てるの?」
「落ち葉だよ。目の前に落ちてきたから、拾ったんだ」
「半分だけ染まってんね」
「うん。さっきの風は一段と強かったから」
友人は私の隣に腰を下ろすと、冷えてしまった手を擦り合わせた。
「急に冷えたからさぁ。慌ててクローゼットからコートとかマフラーを取り出すハメになってさ……大変だった」
「ふふっ。だからあれほど天気予報を見た方が良いって言ったのに」
「それよりもさ」
友人は私の右手を掴んだ。
「お前も手、冷えてるじゃん」
「……そうだね。ここで君を待っていたからだよ」
急に手を掴まれたことに驚きつつも、平静を装って私は返す。友人はそのまま私の手を握り込むと、嬉しそうに笑った。
「変なの。手冷えてるのに、嫌じゃない」
「君、やっぱり変わっているよね」
「そうか?」
11/14/2023, 11:09:16 AM