香魅夜

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【愛言葉】


複数人で下校するとき、
友だちと分かれ道で離れるときは、

「バイバイ!」

と言って別れる。

そうやってひとり、ひとりと少なくなって、
最後に残るのは、私とあなた。

「また明日ね!」

さよならと、バイバイと。
そう言わなくなったのは、いつからだろう。


そんなことを考えていたからか、
あなたが呼びかけていたのに、気づくのが遅れた。

「まーたくだらないこと、考えてたんだろ?」

「え?」

「おまえ、忘れてるかもだけど、
 おれ、おまえとさよならはしない、って
 言ったよな?」

「、、、あ、そっか」

「おれの横は、おまえの定位置。
 約束したよな?」


そうだった。
お別れはしないって約束したんだ。


「おまえとおれの愛言葉は?」

「また明日ね?」

「合い、じゃなくて、愛の言葉だからな。
 わかってんだろ?」

ちょっとぶっきらぼうなのは、
言った自分自身が照れてるから。


そこで、あなたとの分かれ道。

「また明日ね!」

「また明日な!」

視線が一瞬絡んで、そして離れる。


また明日。
あなたとはまた会える。

そんな約束の愛言葉。


だったのに。


今、私の目の前には、もう動かないあなた。
別れた直後、事故に遭った。


「また明日ね、、、」

「明日、、、」

「明日はあなたとのお別れの日。
 明日が来れば、あなたは約束を破る」


「でも、私は空に向かって言うわ。
 また明日、って、、、」


我慢して、堪えていた涙が、ポロリ、と溢れた。

10/27/2023, 5:18:21 AM