無事に内定を得た直子は、順当に大学を卒業し就職していた。初めの一年間はわからないことだらけで、ついていくので精一杯だった。気づけば一年間が終わり、現在二年目を迎えている。
去年は先輩の手伝いがメインだったが、今年からは自分も小規模ながら企画・運営を任されるようになった。責任重大だという一言では表せられないほどのプレッシャーを感じている。同期たちが涼しい顔をしてすいすいこなしていく様を見ていると、自分の落ちこぼれ具合に溜息が出てしまう。
人見知りの直子には、相談したくても相談できる人がいなかった。――いや、厳密に言えば、相談できる人はいたが、遠くて忙しい身だ。たまに通話はするものの、自分の仕様もない愚痴で煩わせたくなかった。
逼迫感を覚えて目を覚ました直子は、スマホを見て、今日が日曜日であったことに気づき、二度寝するかどうか悩んでいた。
最近、夢見が悪い。何を見ていたか覚えているわけではないのだけれど、目覚めたときにいつも何かに追われていたような気がする。おかげで毎日、憂鬱だ。こういうときは、何か非日常的なことを夢想してしまう。例えば、白馬の王子様がやってくるとか。
まだちょっと眠気を感じる。でも、このまま二度寝すると昼過ぎまで寝てしまいそうだ。それだとあまりにももったいなく思う。そんなことを考えているとき、ピンポーンとチャイムが鳴った。
ここ最近、ネットショッピングをした記憶がなかったものの、配達員さんを待たすわけにはいかない。渋々と起きると、カーディガンを羽織って玄関に向かう。急かすように再びチャイムが鳴った。
急いで扉を開けると――。
「……た、匠くん?」
ぽかんと直子は口を開けた。
「久しぶり」
彼はしてやったりとでも言いたげに、目を細めて微笑んだ。
目の前に彼がいることが信じられない。何でこんなところにいるんだろう? 疑問はつきなかったが、何だか安堵して涙が止まらなくなってきた。
泣きじゃくる彼女を、彼はしっかりと抱きしめた。
1/12/2025, 2:28:52 PM