君が見た景色 !マークじゃ足りない感情 遠くの空へ です。
君が見た景色
「うわっ、キレイな海。これってどこ?」
旅行が趣味の大学時代のサークル仲間が、お土産を渡したい。と連絡をくれ、久しぶりにカフェで会っている。
「これはね…」
写真を見ながら、旅行した場所と思い出を語ってくれる彼女。楽しい思い出だからなのか、にこにこと笑いながら、時にはそのときのことを思い出すように目を閉じたりしながら話してくれる。
「いいなぁ、俺も旅行に行きたい。けど…どこがいいのか詳しくないし…」
君をじっと見ながらそう言うと
「私が行きたい場所で良ければ、今度一緒に行く?」
思惑通りの言葉をくれる彼女に、内心ガッツポーズしながら
「いいの?行きたい」
前のめり気味に返事をすると
「わかった。今度旅行に行くときに、声かけるね。けど、私と一緒…2人で旅行になるけどいいの?」
そう聞いてくる。
「もちろんいいに決まってる。俺は、君が見た景色を、隣で一緒に見たいんだ」
君の手をガシッと握ると、君は頬を紅く染めるのだった。
!マークじゃ足りない感情
「は?お前、彼女できたの?」
報告したいことがある。と連絡をもらい、久々に会った幼なじみ。同い年ということもあり、友だちというより、ライバル。と勝手に思い込み、学生時代を過ごしていた。
「で、相手は。相手はどんな人?」
ライバルだと思ったのはそこまでで、社会人になった今は、お互いにグチも話せる友だちだと思っている。
「相手は、お前も知ってる人」
「俺が知ってる。…だと、同級生の誰か?」
「いや、年下で、お前も知ってる人、いるだろ?」
「え?年下で、俺も知ってる…」
うーんと考えてみるが答えは出ない。
「ダメだ。考えてもわからん」
降参とばかりに両手を挙げると
「…わかんねえの?」
不思議そうな顔で彼にじっと見られるが
「全然わからん」
俺は首を横に振る。
「そっか。じゃあ、答えを言うよ。俺の彼女は…」
「お前の彼女は…」
「お前の妹」
「………は?」
彼の言葉に、俺の思考は停止する。
「だから、お前の妹だよ」
聞き間違えかと思ったが、どうやらそうじゃないらしい。
「え、マジで?」
「うん」
にこにこしながら彼が頷く姿に、!マークじゃ足りない感情を、俺は感じたのだった。
遠くの空へ
空を見上げ、キミがいる、遠くの空へ思いを馳せる。キミも同じ空の下で、頑張っているのかな。って。
パティシエになりたい。そう言ったキミに、パティシエの修行に、パリに行ってみたら。と提案したのは俺。
離れるのは淋しい。という感情より、夢を叶えてほしい。そう思って、キミの背中を押したけど、実際離れてみると、キミがいない淋しさで、胸が押しつぶされそうになる。
連絡がとれないことはないけれど、頑張っているキミの邪魔はしたくない。そう思って、こちらからは連絡しないと決めた。でもどうしても辛くなったときは、空を見上げ、キミも同じ空の下で頑張ってるんだ。そう思って、踏ん張っている。
キミが夢を叶えて戻って来るのを、俺は楽しみに待っているのだった。
8/17/2025, 8:23:58 AM