『眠りにつく前に』
「今日はどんな夢を見ようかな」
「自分の好きな夢が見られるの?」
「もちろん」
「すごい! どうやってるの?」
「見たい夢のことを強く想うんだよ」
「えー、そんなので本当に見られるの?」
「本当だとも。お父さんはこれで何度も好きな夢を見ているんだよ」
「じゃあ僕もやってみる!」
父さんの言う通りにはならなかったよ。
空を飛んで、世界中を自由に旅する夢は、どんなに強く想っても見ることは無かった。
けれど、父さんと酒を飲みながら語り合う夢は、何度も見たよ。
きっと、俺が本当に見たかった夢は、これだったんだろうな。
父さん、俺、二十歳になったよ。
いつか一緒に飲もうって言ってた酒は、俺には合わなかったみたいだ。
寝る前に、見たい夢を強く想う癖がついてしまったよ。
いつか、想った夢が見られる日が来ると信じてるよ。
じゃなきゃ、父さんは嘘つきになるからな。
また、夢で逢おう。
11/2/2024, 2:59:22 PM