花束 ①
君は花が好きだったから、誕生日には花を渡した。
毎回渡す花を変えると、毎年違う笑顔を湛える君。
君はもうこの世にいないけど、
お墓にお供えする花は、命日じゃなくて誕生日に持って行くよ。
花束 ②
フィギュアスケートの選手が花束を抱えている。両手で抱えきれない程の花束だ。
だけどこのスケーターはジャンプの着地を失敗しているのに。失敗しているのにぃ。
私は自分の仕事にプライドを持っています。ミスなど決して犯さないし、日本で最高の技術を持っている。だけど誰も私を評価してくれない。死人が相手の仕事だからだ。わたくし、住職をしております。
私が念仏を唱える時はしっかりと気持ちを込めている。故人へのお悔やみを述べ、死後の幸福を祈り、そして俺の念仏の素晴らしさを褒めてくれないかなぁ。と。
そして日本最高の能力を持つ私は、遂に死者会話をする能力を身に付けた。
「お坊様、あなたの念仏は本当に素晴らしい。おかげで極楽浄土に行けそうです。」
「ならば、私を讃えるために花束を渡してくれないか?」
「花束と言われても困りますが、息子の枕元の立って葬式用の花を住職に渡すように伝えます。しかし、お坊様、あなた煩悩多過ぎです。」
2/9/2024, 6:30:42 PM