ととう

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『成人おめでとう』
水色の背景に、白い吹き出し。
先ほど、軽快な音を発した電子の板を握りしめながら、僕は寝起きの腹ばいのまま、呆然と画面を凝視した。
久しぶりの連絡。
この名前。後ろ姿が可愛らしいアイコン。忘れもしない、先輩からだ。
ずっと好きだった。
でも、言えなかった。
卒業してからは、先輩も忙しいだろうと連絡を控えていたのだが、当然、先輩から連絡が来ることはなかった。
今になって思えば、なぜ連絡しなかったのだろうという後悔だけが募っていった。
でも、今は……。
文字を打とうとする手が、わずかに震えることに気付いた。
ぎゅっと唇を噛む。
返事が来なかったら?嫌われたらどうしよう?
動かないカーソルが、画面の中で無機質に点滅している。
もう僕のことなんて、ほとんど覚えてないんじゃないか。
先輩。優しくて勉強家で、半分こした肉まんが、熱すぎて『やけどする〜』ってはしゃぎあった、お茶目な先輩。
──やっぱり、先輩と話したい。
送信ボタンを押す自分の気持ちは、今年でいちばん晴れやかだった。

1/10/2024, 11:57:27 PM