となり

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「白と黒の間は何色?」
 よく耳にするのは灰色だけど、実際目にしたのは〝透明〟だった。透明というのは曖昧なもので色そのものが無いといえばそれまでだけども。水色の水の実物が透明であるように此処は〝透明〟と表現のできる色をしているのだった。興味本位で触れようとしても形を成さず、しかし確かに実在する次元で首を傾げてしまう。
 向こうを見れば遠くの方でこぼれる光が見えた。後ろを向けば離れた先に深い暗闇が広がっていた。此処は丁度その間の位置。道標も何も無いからどちらへ進むことも出来ず途方に暮れる。
 今、自分はどうしたいのだろう。目標も、熱意も、使命も、縛るものも、何もない。宙ぶらりんな気分で漂うのは嫌いな方ではないが、物事と物事の間で浮かぶのと、こうして突然放っぽり出されるのでは訳が違う。浮いた身とは裏腹に、いつまでも心は浮かんではくれず、感情すら覚束ないまま〝透明〟に身を委ねるしかなかった。


#光と闇の狭間で

12/2/2024, 10:20:22 PM