情緒に欠けた暮らしをしているせいか、月夜の思い出もあまりないので一般的な話題で。
朧月は春の季語。
辞書によると「霧や靄などに包まれて、柔らかくほのかに霞んで見える春の夜の月」とある。
朧月夜はそんな月が出ている夜。
朧月夜というと、まず連想するのは源氏物語に出てくる女君。宮中で催された桜花の宴のあとに光源氏が出会う美女である。
ちょうどいま、紫式部が大河ドラマの主役になっている。観てはいないがなかなか面白いらしい。
京都で桜が咲く頃というと3月下旬なので、もう少し先になる。
美女(実は右大臣家の姫君)が「朧月夜に似るものぞなき」と口ずさむのを光源氏が耳にするわけだが、元の和歌は大江千里が詠んでいる。
照りもせず曇りもはてぬ春の夜の朧月夜にしくものぞなき
(明るく照るのでもなく曇るのでもない、春の夜の朧月夜に及ぶものはない)
マンガや現代語訳をさらっと読んだだけなので深いことは語れないけれど、朧月夜の君は深窓の姫君ながら大胆で意思を持った人物として描かれている。
姫君が一人でぶらついていること自体、異例らしい。個人的にはよよというタイプより好きだ。
桜の咲く頃、ぼんやりと霞む月を見たらこの歌を思い出して、少しは風流な気分に浸りたい。
『月夜』
3/8/2024, 7:03:45 AM