またね
俺と君が帰り道別れる時の挨拶。
『またね』。
またね、という言葉に君がどういう言葉を込めているかはわからない。
「また会おうね」「また明日ね」 、他にもあるだろうが自分には考えつかない。
どちらにせよ、「またね」という言葉はもう一度会うことを約束したとも言えるだろう。
毎日のように『またね』と言い合っていたある日、
君が「ばいばい」と初めて言った。
少し驚いたが、そんなこともあるか、と同じようにばいばい、と返した。
いつもは何回も振り返っては手を振り続ける君だったが、今日は振り返ることなく夕日の中を歩いていった。
その背中は、いつもよりも小さく見えた。
次の日から、君は学校に来なくなった。
体調でも崩したかと思ってラインをしたが、既読はつかなかった。
次の日も、また次の日も君の顔を見る日は来なかった。
「先生、あいつなんで来てないんですか?」
ふと聞いてみた。
「…理由を説明するから、放課後残ってくれるか」
「え?はい」
先生はどこか悔しげで複雑な表情を浮かべてそう言った。
放課後、教室で残っていると、先生が入ってきた。
「あのな、…あいつは、」
「…自殺したんだ。」
「…え、?何言って…」
「……嘘だろ…?嘘って言ってくださいよ、先生。」
「…本当なんだ、遺書には…こう書いてあった。」
先生から伝えられた内容は、まず君が虐められていたこと。それから、いじめが原因で自殺したこと。
そして…俺のことが好きだったこと。
「なんだよ、それ…」
いつの間にか目には涙が滲んでいた。
俺も君のことこの上ないほどが好きだった。なのに、君の笑顔が消えたことにも、虐められていたことにも気付けなかった。
8/6/2025, 1:05:38 PM