「やっと、やっとここまで来た」
長い間育ててきた。
それももうすぐ芽吹きの時だ。
「ようやく報われる」
「あっ、咲きそうじゃん。ありがとう」
「え?」
大切に育てた俺の大事なもの。
時間をかけて、時間をかけて、大切に。
それがわずか3秒で奪われた。
「え?え?あの、それは大切な」
「私に貰われてあなたも嬉しいでしょ。良かったじゃん」
「そっ、そんなわけない」
「あんたは育てて嬉しい。私は楽して綺麗なものが貰えて嬉しい。win-winだね」
嬉しそうに、僕の大切なものを奪っていった。
……なんでだよ。
どうしてこんな目に。
「あぁやって、上澄みだけを遠慮なく盗んで行く人達をどう思う?」
「あ、あなたは?」
よく分からない人に話しかけられる。
その人は何処か不思議な存在だった。
「許せるわけない」
「ふふふ、そうだね。許せるわけが無い。だけどね、どうやらそうやって上澄みを遠慮なく盗んで行く人達は尊敬されて、しかも崇め奉られているらしいよ」
「なっ、なんでそんなこと!楽するやつが尊敬されるなんて」
「それが現実さ。どうおもう?君はどうする?」
「そんな現実、認めない、認められるものか」
涙が溢れて止まらない。悔しくてたまらない。
「……君はそれでも、恨まないんだね」
「恨んでるさ。恨んでるに決まってる。だけど、なんで、なんで僕は、それでも非常になれないんだ」
「……きっと、君のその強さは認められることは無いだろう。強いはずのその心は、弱者だと決めつけられ、勇気が無いと罵られる。ほんとに、人は浅はかな奴が多いね」
「くそ、くそ、くそ、くそ、くそーーー。勇気がないから、動けないんじゃない。思いやりがあるから、攻撃できないんだ。思いやりなんてなかったら、簡単に攻撃できるのに、どうしてこんなに理不尽なんだよ。なんでこんな優しい心なんて用意したんだよ、ちきしょー、ちきしょー、ちきしょー」
「……ごめんね。優しい心を与えたばかりに。そして、愚かにも人を信じた私を許しておくれ。その優しさは、尊い存在になるはずだった。悪いのは私だ。そして、愚かな思考しかできない人間だよ。だが、そんなことを言っても、君には何も救いなんてないんだけれどね。本当にごめんね」
「ちきしょーーーーーー!!」
いつか、いつか報われてほしい。そう思う私は、きっと愚かな神なのだろう。
3/1/2025, 11:10:58 PM