千五百年以上も生きる私には
周りの世界はまるで他人のようだった。
自分はそこにいるのに、
この世界の一員なのに
ここにいないみたいな。
1度だけ
背の低い人を連れて旅をしたことがある。
趣味の予言を伝授したが
私にはまだ遠く及ばない。
精々翌日のことが
ほんの少し詳しくわかるだけだ。
それでも未来の見方を教えて
予言の練習をさせた。
私にはこの人は習得ができないという未来が
バッチリ見えていたのだ。
しかしなぜか教えずにはいられない。
未来をこの手で変えてみたい。
そんな浅はかな願いで
その人に付きっきりだった。
ある日、
その人からカラフルな花束を貰った。
額縁にフィルムで空気を入れずに挟むと
枯れないらしい。
永遠の花束。
永遠なんてそんなもの、
存在しないはずなのに
この花は枯れるはずなのに
人の手によって永遠は実現された。
私はたまらなく嬉しくて、
その日はいつもより細かく教えた。
まだまだ私の寿命は長い。
あともう千年は生きられるだろう。
でもこの数年が誰かの人生を変えて
私という存在を植え付けた。
心に残り、
声も顔も仕草も笑顔も
覚えてしまうのだ。
"Good Midnight!"
白色の額縁に入ったカラフルな花束は
今日も色褪せず綺麗で。
2/4/2025, 3:56:18 PM