Ayumu

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 アップした写真を確認しにいって、自然と唇が緩んだ。

 ――今日も素敵な写真ありがとうございます。マジックタイムっていうんですね。なんだか夕日なのに夕日じゃないみたいな、不思議な感覚になる色合いですね。

 コメントの横には「とおる」というニックネームが書かれている。いつものようにお礼コメントを書いて、ページを閉じた。
 とおるさんは、半年前に写真の投稿を始めた初期から応援してくれている人だった。もちろん他にも応援してくれている人はいるけれど、とおるさんは特別。

 敢えて言うなら、さりげなく背中を押してくれるような存在だった。
 つらいことがあると、過去にもらったとおるさんのコメントを何度も読み返した。写真に関しての感想のはずなのにどうしてだろう、自分自身をも励ましてもらっているように感じた。
 変な押しつけがましさがなく、ただ素直に自分の感想を綴っているのがわかるからかもしれない。

 実際、どんな人なんだろう。何度か想像したことがある。
 文面からは性別も年齢も読み取れない。

 それでも、個別に連絡を取ろうと思ったことも、実際に会いたいと思ったこともなかった。
 ネット上で、感想をもらい、返す。それだけの関係だからこそ、素直なやり取りができているのだと思う。

 でも、実際の自分を見られてがっかりされたくないという理由もあったりする。
 なんてとおるさんが知ったら、もっとがっかりされそうだ。

 うっかり余計なことを考えてしまった自分に苦笑しながら、次の写真のネタに思考を切り替えるのだった。


お題:特別な存在

3/23/2023, 11:02:21 PM