たろ

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※閲覧注意※
マイノリティな表現や自虐的だったり、センシティブな表現があります。
モダモダしているので、ムダに長いです。

【幸せに】

あなたの幸せを考えたつもりで、余計な事ばかり口走ってしまった。
「自分の事は、二の次で良い。大切な人を本当に大切にする為の代替え扱いにして、構わないから。…それもダメって言われたら、諦めるから。」
胸の奥が多少傷んでも、関係が壊れない様に気を遣うつもりだったし、相手の大切な人に迷惑をかけるつもりもないから、とあなたには笑って伝えた。
「な、んで?…大切な人って、何?え?どうして?急に、そんな事、言われても…。オレ、なんかしちゃった?やらかした?」
目を見開いて動揺しているあなたに、出来るだけ穏やかに対応しようと、笑顔を貼り付けて応える。
「和真は、何もしてないから、大丈夫。大切な人の事をちゃんと大切にして、和真にも普通に幸せになって欲しいから。だから、関係をちゃんとしなくちゃなぁって…。」
思って、と言いかけたところで、あなたが急に駄々をこね始めた。
「ヤダヤダ!何でそんな事言うの?大切な人って何さ!一番大切なのは、かっちゃんだよ!それ以上の人、居ないし!普通に幸せだよ!今っ!」
あなたが、うわぁ!と泣き崩れるのを、何処か他人事のように茫然と見つめる。
「これ以上、俺のワガママに付き合わせちゃ、ダメだって、考えて…。和真には、普通に幸せになって欲しい。俺には無理でも、和真には出来るんだから、さ。」
泣き伏したあなたの丸まった背中を、摩りながら宥める様に声を掛ける。
「普通って何さ!オレの幸せは、オレが決めるの!…オレは、かっちゃんが、良いの!」
どうして目の前のこの人は、自分に都合の良い事ばかり言ってくれるのだろうか。
「子供は産めない、結婚も出来ない。…和真には、どっちも出来る可能性があるんだから。何の役にも立たない俺と、ずっと一緒に居る必要ないじゃん。彼女さんと和真は、ちゃんと籍入れて結婚して、俺とはセフレで充分。ねぇ、そうしよう。」
人に合わせるのが上手なあなただから、きっとワガママを言い続ければ一緒に居てくれるだろうから、きちんと区切りをつけないと。
「…かっちゃん?彼女って何?そんなヤツ居ないけど。セフレって何?誰かに言われたの?オレ、子供キライだし、イラナイ。自分の遺伝子を残すとか、虫唾が走るんだけど。」
すっかり嗚咽が止まって、丸まった背中がしゃんと伸び、泣き腫らした赤い目がこちらを見つめる。怪訝そうに寄せた眉間のシワに加えて、地を這う低い声が返事をする。
「え…?この間、女性と腕組んで、歩いてたよな。」
胸の奥がグズグズと崩れて行きそうになる。
「可愛らしくて、仲良さそうだったし、お似合いだったから。良い人、見つかったんだなぁって、思っ、て。」
喉の奥が軋む。震えそうになる胸の奥の痛みを見て見ぬ振りをする為に、自分の腕を強く握り締めた。
「この間?腕を組んで?歩いて…。あぁ!道案内した時の!え?かっちゃんが近くに居たってこと!?うっそ、気が付かなかった!隠れてたの?」
ひとしきり百面相した後、嬉しそうに抱きついて来るあなたの体を受け止める。
「白杖持ったお姉さんが、お困りだったから、ちょこっとお手伝いしただけだよ。浮気?ナイナイ!…むしろ、ヤキモチ?ちょっと嬉しいかも。いやいや、ダメダメ。肝が冷えるわ!ふわぁ、ビックリしたぁ…。」
ぎゅうぎゅうに抱き締めてくる、あなたの腕に締め上げられながら、悲しみや苦しさで震える喉と胸の奥が喜びで震えるのを感じて、動揺した。

3/31/2024, 11:24:52 AM