…ふざけんなよ。ふざけんな!
俺たちが求めてたのは”こんな結果”じゃないだろう?!
俺たちはただ、ただ…笑って欲しかった。今まで出会って来た人たちに、別れて来たものたちに、これから出会うだろう全てに、ただ、笑っていて欲しかっただけ。
ただ、いつでも隣に居てくれたお前たちに、笑っていて欲しかっただけ…。
朝日が昇り教会の鐘の音と共に毎日が始まる。人々は畑を耕し汗を流す。月夜に祈り、大地の恵みに感謝をする。そうして眠りにつく。
何の変哲もない明日を迎えて、俺たちは方々旅をする。そうしてたどり着いた街で宿を取り、滅茶苦茶な曲を奏でるアイツに合わせてオッサンは下手な即興曲を披露する。それをヤジ混じりに笑うお前がいて、壁に寄りかかってアンタは呆れた顔で笑うんだ。
俺が、俺たちが求めてたのはそんな…変わり映えのない日常だった。そうだろう?
富とか名声だとか、そんなもの求めちゃいなかったんだ。この際感謝の言葉だって要らない。
それなのに、どうして…—?
強過ぎた光は世界を飲み込んだ。闇夜は光で塗り替えられて、やがて人々は夜空を忘れた。
光の均衡を崩したかの英雄は、いずれこの世界の人々から謗りを受けることになるだろう。
誰かが言った。「希望は絶望に、光は闇に負けることなどないのだ」と。なら問いたい。光に闇が負けてしまったらどうなるのだ?と。
血濡れて転がる仲間たちを見て思う。嗚呼、これが俺が望んだことだったのか?と。
光を失った瞳はまるで紛い物の様に虚空を見つめている。忌々しいほどに光に溢れた空が、黒鉛のようなその目を煌めかせた。
—こんなの負け戦だ。
それでもいかなくてはいけない。この世界の人々を”救う”為には、道はコレしか残されていないのだから。
俺は首元に武器を当てがう。幾度と無く悪を切り裂いて来た自慢の一品。それが今は仲間たちの血潮で濡れている。
覚悟を決めて力を込める。痛みよりも先に身体に漲るのは、新たな決意だ。
—救ってみせる。必ず…!
たとえこの先に困難が襲い掛かろうとも。受け入れ難い現実が待ち受けていようとも。たとえ、この先の世界ですら極悪人になろうとも。
次元の狭間で俺は腹を括る。俺たちの世界に”闇”を連れて帰る為に。
≪光と闇の狭間で≫
12/3/2024, 1:02:01 AM