中宮雷火

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【枯れない愛には花束を】

かつての恋人が好きだったドライフラワーを、自分も買ってみた。
早速部屋に飾ってみると、部屋を包む陽の気を吸い取っているような気がして、それは何だか嫌だったが、部屋に新しいものが増えただけで、気分が良くなった。
 
ドライフラワーを眺めていると、かつての恋人との思い出が蘇ってきた。

恋人は、ドライフラワーを好んでいた。
恋人の部屋に行くと、棚の上にはいつもドライフラワーが飾られてあった。
どうしてそんなにドライフラワーが好きなのかは分からない。
けれど、花瓶に可愛らしく飾られているドライフラワーは、確かに恋人にピッタリだった。

結局、1年前に破局してしまった。
何年も一緒にいると、どうしても恋人とのすれ違いはあるのだ。
仕方ない。
仕方ないけれど。
ドライフラワーを眺めただけで、また恋人のことを思い出すのだから、未練が残っているのだろう。

あの時自分が何か気の利いたことを言えていたら、とか。
あの時あんな態度とらなければ良かった、とか。
ああ、この恋はとうに枯れたのかな。
そんなことを考えると、少しだけ涙が出そうになった。
そして、この感情は「恋」ではなく「愛」だということに、今更気づいてしまったのだ。

2/4/2025, 12:15:07 PM