わたあめ

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「そろそろ起きてください。間に合わなくなりますよ」
トナカイのダーシャがサンタクロースの肩を揺する。
「もう少し寝かせておくれ」と布団を顔にかけるサンタクロース。
「全くうちのサンタクロースはなんでこんなにネボスケなんだ」と呆れたように別のトナカイ、ドミーが言う。
「荷物の準備はできてるかい?」ダーシャはドミーに尋ねる。
「もちろん、キューピたちがしっかりやってくれているよ」

 ダーシャはもう一度サンタクロースを起こしにかかる。
「今日はクリスマスですよ。みんながあなたを待っているんですよ」
 サンタクロースはしぶしぶ布団から起き出し、ノロノロと準備を始める。赤いズボンに脚を入れながら、「おや、ちょっと太ったかな。ズボンがきつくなってるぞ」なんてぼやきながら。

「サンタさん、もう行きますよ」
家の外でトナカイたちはそわそわしている。サンタクロースは上着を着て玄関から外にでる。外はすっかり雪の積もり、冷たい風がサンタクロースの顔にあたる。もう日付が変わる時間になっている。
「おお、寒い。早くプレゼントを配り終えて温かい布団でもうひと眠りしたいものだ」

 トナカイの引くソリに乗り街へ着く頃には、空がうっすらと白み始めている。
「困ったなぁ、一軒ずつ回っていたらみんな起き出してしまうぞ…」とサンタクロース。
「だから、早く起きてくださいって言ったんですよ」ダーシャは呆れたように言う。
「そうだ!みんなにプレゼントを取りに来てもらおう!」サンタクロースは名案だと言うように声をあげる。

 街で一番大きなクリスマスツリーの飾ってある広場へ向かう。そして、そりに積んできたプレゼントひとつひとつに名前を書いていく。それをクリスマスツリーの下に並べていく。
 朝日が顔を出す頃、ようやく全てのプレゼントを並び終える事ができた。

 クリスマスの朝、目が覚めた子どもたち、待ち望んでいたプレゼントは届いていない。落胆の気持ち、不思議な気持ち、悲しい気持ち。みんな元気のない様子でいると街の広場から楽しそうな音楽が聴こえてくる。トナカイたちがベルでクリスマスの音楽を奏でる。誘われるように広場に子どもたちが集まる。

 人が来るのがわかるとトナカイとサンタクロースは広場の奥にある木立の影に身を潜めた。
 子どもたちがプレゼントに気がつく。
 「僕の名前が書いてある!」「私のはこれだわ!」
 次々にプレゼントを開ける。子どもたちの歓喜の声が広場に響き渡る。友達とプレゼントを見せ合う子どもたち。プレゼントを抱きしめる子どもたち。すぐに遊び始める子どもたち。どの子の顔もキラキラと輝いている。しばらくして子どもたちは広場を後にする。

 全てのプレゼントが行き渡った事を確認して、サンタクロースとトナカイも家路に着く。サンタクロースは独り言のように呟く。
「子どもたちはみんな、あんなに喜んでくれていたんだね。いつも運んで終わりだったから、全然知らなかったよ。来年からも頑張らないとな」


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お題:プレゼント

12/24/2024, 10:33:46 AM