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「この空に飛び立つことが出来ればどれだけ楽になれるんだろうね」
彼女は良くこんな事を言っていた。飛び立つとは一体どういう事なのか私は分からなかった。翌日彼女は自宅のベランダから飛び降りたというニュースが流れた。幸い命は繋がったようだが意識不明との事だ。
「若いのに恥ずかしいわね。あんたはこうなったらダメよ」
獣を見るような目でテレビを見る母が言ってきた。彼女の思いを無下にした母は彼女よりも獣だろう。その時ようやくあの言葉の意味が分かった。
ースズメが鳴く頃にー
私と彼女は中学生の時に初めて出会った。クラスメイトに虐められている彼女を助けたことで私を好きになったようだ。
「ありがとう。私は清本渚。貴方の名前は?」
渚は赤く腫れた顔を抑えながら微笑んだ。虐められてるのにタフな女の子だと思いながら私は答えた。
「葵花楓」
名乗るのは余り好きじゃない。葵、小学二年生の時だったか、良く葵のせいで空が青い。なんてギャグが流行ったから。

6/30/2024, 9:16:33 PM