きみに焦がれていた。きみを想っていた。
その笑みに、声に、ひとびとを救うきらめきに、小指の先だけでも触れることができたなら。きっと、わたしの人生には意味があったと胸を張ることができる。そんなことを思っていた。
──逆説。きみに近づけないのなら、わたしの人生に意味はない。
うつくしくなるために努力した。
他人に好かれるために努力した。
勉強に励んだ。運動に励んだ。
綺麗で、善人で、きみの隣にふさわしいような。太陽の横で笑う天使になるために、わたしはわたしの穢れを濯ぎ続けた。身の丈に合わない努力でも、身の丈に合わない地位に立つために、頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って──頑張り続けて、頑張り続けた、のに。
どうして?
どうしてきみは、そんな顔をするの?
わたし、きれいでしょう? やさしいでしょう?
きみにふさわしいでしょう? ねえ。
だってそのために頑張ったんだ。そのためだけに頑張ったんだ。きみに認めてもらえなければいままでの努力にまったくの価値はなくて、だからほら、笑ってよ、褒めてよ、きみの隣にいさせてよ、そうじゃなきゃ、そうじゃないと、そうじゃないなら、だって、そんな。
──偽物の天使《イカロス》じゃ、太陽《きみ》のそばにはいられないの?
8/6/2023, 11:15:50 PM