「アンタはそう思うの?」
対面で、頭がちいさく頷く。
はなをならして笑うと、それがピクっとゆれる。
「あ、そう」
ニンゲンは顔をくもらせて、頭を地面へむけた。
近頃のコイツは、だいたいこうだ。
下向いてそっから、ハタ、ポロポロ……なんて、なみだを零してる。
地面より、空みたほうがいいと思うけど。
ニンゲンは、急にバッと顔面をあげて、こっちをみながら、ヒドイぐあいにふるえた口を開く。
「イエス、ってこと?」
ジョーダンみたいなこと言いながらニンゲンは、
へったくそすぎて気味悪い笑顔を、うかべた。
「……ハッキリ言ってほしいな」
また顔をそむける。
木陰から、顔半分がはみでたから、その目がうるうるうるうる、いまにもまた、涙をこぼしそうなのがわかった。
「ノー」
言うと、ほとんどおなじくらいの背丈が、おもしろいくらい揺れて、ついにニンゲンは、後頭部しかみえないくらい顔面を背中へひっぱった。
肩がプルプルふるえていて、
笑いをこらえてるようにも見えたが、
落ちてるしずくがそれをしっかり否定する。
こういうとき、なんて言ったらいいんだろう。
今みたいな状況は、口下手をさらに加速させてよくない。
ようやく、話す言葉の目処がついて、
口を開こうと思ったのに、自分の口も、さっきのニンゲンのように、ふるえていて、
もちろんそれは、絶対、緊張にふるえているだけ、なんだけども。
とにかく、ふるえてるってだけで、
自分のバカみたいにちっこい勇気の消失を感じた。
ふたりして、だまりこんで、気まずいとかそういうのを通り越してる。
頭上を笑う鳥たちが飛んで、ふたりをその影で覆い尽くす木は、葉擦れのヤジをとばす。
今世紀一、ヒドイ告白だ。
なまぬるい風にあおられて、ため息をつく。
……さすがに、いまのは酷かったかな。
ニンゲンは、手を握りこんで、頭をふるわせたかと思えば、ゆっくりこっちへ顔をむけた。
ヒドイ顔。
なみだだらけ、顔面中どこも真っ赤。
必死に、なみだをこらえてるのか、目によったシワ。
「ごめん」
それだけいって、ニンゲンは木陰から逃げるように退散した。
つったって、走っていくうしろすがたを見てるだけ、それでもせわしなく、風は袖をゆらして、なまぬるい。
ぼくのこと嫌いだよね。
とか、そんなこと聞かれるのははじめてだ。
自分の顔に手をあててみたら、予想外にアツい。
……たぶん、太陽のせいだな。
土を蹴った。
5/29/2024, 1:23:54 AM