月影

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空っぽになった鳥籠を手に飛び去る蒼鳥を僕は見送る。これで何羽目だろう、色とりどりの鳥を手放したのは。愛着が無くなったわけではない、要らなくなったわけでもない、もう二度、この手に入らない事は知っている。手放したのは、幸せに出来る自信がないから。鳥達にはどうか幸せになって欲しいから。朽ち欠けた己の手に視線を落とす、漸く、あと一羽だけが残っている。
僕はそっと鳥籠に手を伸ばす。
「僕の時間の中にいてくれてありがとう」
手放す、勇気を振り絞って鳥籠を持ち上げた。

5/16/2025, 11:00:41 AM