めい

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僕の病室には、折り鶴がたくさんある。
もらったのでは無い。自分で折ったのだ。
正確にいえば、自分と同室のじーちゃんばーちゃんにも手伝ってもらった。
ことの発端は、僕の友達が、
「見ろよ、ガウスルート千羽鶴だぜ!」
だとか言って、31羽の折り鶴を持ってきたことだ。
僕のために鶴を折ってくれるのは嬉しいが、クラスメイトが1人1羽折るという絶妙かつわかりやすいサボりをされてしまい、複雑な気持ちだ。
いや、ふざけて木に登って、体重で枝が折れて落下からの骨折という間抜けな理由での入院だ。くれただけでもものすごくありがたいことなのだ。
それはそれとして、同室のじーちゃんばーちゃんに送られた立派な千羽鶴と比べると、「ガウスルート千羽鶴」は少々見劣りする。
だから、僕はこの「ガウスルート千羽鶴」を本物の千羽鶴にしてやろうと思って、入院中の暇な時間を折り鶴制作に使っているのだ。
一人で969羽折るのは大変なので、手伝ってもらっている。
千羽鶴になったら、クラスメイトに送り返してやろうと思うので、写経の上手いばーちゃんに折り紙に念仏みたいな呪いの言葉を書き連ねてもらった。
入院中の自分のために千羽鶴を折るだとかいう前代未聞のことを僕にさせたクラスメイトには、ばーちゃんの呪いをかけてやろう。
そう思いながら僕は168羽目の鶴を折り始めた。

8/2/2024, 12:33:12 PM