考えさせてくれと言ったが、考えることなど何もない。柳の提案を呑むか、断るか。ただ断る場合は、それ相応の理由がなければ柳は納得しないだろう。
どうして今更都なんか……。ていうか何でわざわざ学校。
無論柳は自分の昔のことを知らない。だから、自分の将来を心配して善意で提案したのだろう。
……あんな目に遭って、名を改めて神官の小姓なんてやっているのにまだ自分は叶わぬ夢を見ているのか。
指先で郁青と綴った。セイとしか名乗らなかった自分に与えられた新しい名前だ。郁郁青青。何処の馬の骨かもわからない孤児に与えるには立派な名前だ。
郁青は長い長いため息をついた。
13歳。農村では立派な働き手だ。
いつまでも神官の小姓でいられるはずはない。
「オレは郁青、郁青だ」
そのために都に行く。あの場所で、郁青になるために確かめに行く。
神殿に戻ると、柳はいつも通りの様子で郁青を迎えた。進路の話などなかったように迎えてくれた柳にこのままやり過ごそうかと気持ちが揺れた。
「郁青?」
「柳、話がある」
1/13/2024, 8:16:14 AM