るに

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その日は風が強かったんだ。
放課後ポストだか何だかに入れた手紙、
喋る変なカモメが
しっかり届けてくれるって
言ったのに。
風が強くてカモメは海に落ちた。
一瞬ボソッと
誰かの名前を呼んだ人が
いたと思ったら、
それは隣にいた少女で
海に飛び込んでカモメを助けに行った。
私も海辺まで駆けつけた。
2人ともずぶ濡れで
高い波にさらわれなかっただけ
マシだと思っていた。
カモメも少女も
ごめんと謝りながら
ぐちゃぐちゃに破れた紙を渡してきた。
波にさらわれた手紙は
ボロボロだったけど
たしかに帰ってきた。
その事が少し嬉しかった。
多分この2人の他に
海にまで手紙を取りに行ってくれる人は
いないだろう。
クソみたいな世界に
クソじゃない人がいたなんて
それはそれで驚いた。
2人には
手紙はちゃんと届いた、
取りに行ってくれてありがとうと
言っておいた。
私が書いた手紙の宛先は
私自身だった。
当たり前のように
文通する相手なんかいるわけなかった。
私は共有・共感したいことを
私とするのだ。
そして初めて幸せを感じる。
あぁ、私を幸せにできるのは
私だけだと。
"Good Midnight!"
私が書いた私への手紙を拾ってくれた
2人に敬意を表し
私はまたクソみたいな世界で生きる。

8/2/2025, 4:53:37 PM