つぶて

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 仰向けになって星空を観ていた。夜に瞬く光のかけら。手を伸ばしてみると、遠い昔のことを思い出す。この広い宇宙のどこかに王子様がいるんだと思っていた。満天の星空からやってくるその人は、宇宙と同じ色の目をしている。美しい髪、美しい背筋。銀河の誰よりも美しいその手が、私を待っている。
 あれから数十年。宇宙の王子様はやって来なかった。代わりに来てくれたのは、この星に生まれた、ありふれた男の人。真面目で、優しくて、いつもに嬉しそうに横にいてくれる人だ。
 ちらりと隣を見る。その人は微笑んで、来てよかったねと言う。そうだねと返して、私は夜空に向き直る。美しい星たち。だけど、その美しさもこの人には敵わない。だって、こんなにも近くに居てくれるのだから。
 
 

7/5/2023, 1:11:28 PM