スーパーファミコン、という古いゲーム機をご存知だろうか。聞いといてなんだけど、詳しい説明は省く。知らなきゃ調べてくれ。
とにかくそいつは、俺の家で未だに現役で稼働しているゲーム機である。
実家からかっぱらってきたどデカいブラウン管テレビをいまだに部屋においているのもスーファミのためだ。
べつにレトロゲーが好きというワケではない。なんなら俺だってPS5がほしい。買う金がないだけで……
まぁ、俺の懐事情はおいといて……
たまにリサイクルショップにふらりと立ち寄って、スーパーファミコンのRPGのソフトを買うことがある。
ドラクエだとかFFだとか、メジャーどころのやつだ。
プレイして懐かしさに浸るつもりはないし、動画サイトで流行りのRTAだとかに挑戦する目的の購入ではない。
中古のゲームソフトに残されし記録された他人の記憶……すなわち、このゲームを売る前まで持ち主だった人のセーブデータを覗き見るのが俺は好きなのだ。
「おいおいおい、こんなレベルでここまでよく来たな。そりゃ『カルコブリーナ』で詰むよな。しゃあねえ、俺が倒してやるか……!」
志半ばで力尽きた他人の物語を引き継ぎ『光の戦士』となって戦う俺。
また、ある時は……
「……ったく、なんでここまで来てアムロのレベルが15なんだよ。マジンガー好きなんだろうけどマジンガーZじゃだめだ、アムロとニューガンダムのレベルを上げて矢面に立たせるんだよ……!」
他人のセーブデータにツッコミをいれつつ、ゲームボーイアドバンスのソフトをプレイする。
そんな生活を続ける中、リサイクルショップで伝説のソフトと出会った。
そのゲームの名は『ロックマンエグゼ』 名作である。
中古で800円のそのソフトのパッケージには『ゆうと』と平仮名で元の持ち主であったはずの者の名が油性ペンで、でかでかと書き込まれていた。
『他人のセーブデータを覗き見る』のを趣味としている俺からすると、これほど購買意欲をそそられる品物はない。
(ゆうと、お前の冒険を俺に見せてくれ……!!)
ワクワクしながら購入し、家にかえって起動する。そこで、俺は絶句した。
「なっ……」
カーソルを動かすことができない。『はじめから』しか選べない。『つづきから』が存在しなかったのだ。
「ゆうと、どういうことだ……」
俺は頭を抱えた。
買って一度もプレイせずに売り払ったのか? あるいはセーブデータが経年劣化で消えてしまったのか?
「ゆうと、なぜなんだ……」
答えは分からない。俺とゆうとの物語はそこで終わりを迎えた。
10/29/2024, 10:41:19 AM