とある恋人たちの日常。

Open App

 深い深い眠りの中。突然、何かがのしかかったような気がした。
 ゆっくりと、でも優しく拘束されていく。その絡め取られる重さは彼を眠りの海から浮かび上がらせた。
 
 重いまぶたを開けると目の前には愛しい恋人がいた。彼を布団の上から抱き締めたまま。
 そんな彼女は瞳を閉じ、規則的な吐息。
 
 くんと鼻を掠める。それは微かなお酒香り。
 
 呑まされたのかなと彼は銀色の髪の彼女の腕を優しく外して、布団の中に入れた。
 
 残業の上にお酒を呑んだのか。楽しくなって呑み過ぎているのは容易に想像ついた。
 
「おかえり。それと、お疲れ様」
 
 お酒のせいか、ほんのりと赤くなっている頬を軽く撫でると、むにゃむにゃと愛らしい反応を返す。
 起こしたかなと焦りを覚えるが、そのまま気持ち良さそうに眠りについていた。
 
 これは起きないなと理解した彼は彼女を自分の腕の中に納めると、額に軽く唇を乗せた。
 
 こんな遅い時間にお酒を呑んで帰って来るなんて、明日はお説教だな。
 
 そんなことを思いながら、愛しい彼女を抱き締めて再び眠りの海に身を委ねた。


おわり

お題「真夜中」

5/17/2024, 3:57:56 PM