【夢が醒める前に】#13
彼が死んだ。
事故だった。
高齢者が運転している車に、
彼は引かれてしまった。
彼はその日、私の婚約指輪を
買いに行ってくれていたらしい。
私もその日、
今までの想いを精一杯伝えて、
彼と婚約するつもりだった。
私は絶望のあまり、
食べることも、
寝ることも、
何をするにもままらなかった。
そんなある日 、久しぶりに眠ることができた。
そして、目を開けると、彼がいた。
「久しぶり。笑」
「なんで今まで居なくなってたの、」
「ちょっと色々あってね、笑 デートしよっか。」
彼は優しく微笑んだ。
私はそんな彼を抱きしめた。
精一杯、もう離さないと。
でも、抱き締めてる感触はそんなになかった。
夢なんだな。
そう思った。
「私、伝えたいことが沢山あるんだ。」
ちゃんと、
「ちゃんと聞いてくれる??」
ちゃんと、
「もちろん。俺も伝えたいこと、あるから。」
夢が醒める前に全て伝え切る。
だから、
もう少しだけ、
もう少しだけ、
彼を感じさせて。
3/20/2024, 11:13:13 PM