回顧録

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なぁ、お前とアイツって付き合ってんの?
肘を付いた親友の突拍子ない一言に、コーラを吹いた。

「っげほっ……いきなりなんやねん!んなわけあるか」
「アイツしか言ってないのに、誰のこと思い出したのかなーゆうくーん?思い浮かんだ相手が君の好きな人でーす」

俺にはニヤニヤしているようにしか見えないが、
女子には王子様スマイルに見えるらしい。
黄色い歓声が聴こえてげんなりする。

「お前らがようしょうもないこと言うからやろが!」
「何の話?」
「俺とヒナが付き合ってるって言うバカみたいな話やんけ。関西人がバカ使うんは相当救えへんバカやぞお前」
「へー、僕ときみくん付き合ってるん?」
「そう、ヒナのこと好きなんだって」
「僕もきみくんのこと好き。付き合えるかは……わからんけど」
「あ、きみくん振られちゃったね、ドンマイ」
「黙れタキ」
「あっ、きみくん傷心中?ヒナ向こう行っとこっか」

ヒナの手を握って瀧が席を立つ。
このウザイやつがアホほどモテるなんて世も末だ。
あぁホンマに世の中って顔が良ければええんやな。

「ヒナだけ置いて、二度と戻ってくんな!」
「2人っきりにさせてあげるから素直になりなよきみくん」
「うるさい喋んな」

大体食堂で2人きりな訳がない。こんなバカみたいなやり取りを他に人がいる時にしたことが今になって後を引いてくる。置いてかれちゃった、と呟いたヒナがさっきタキが座っていた席に着いた。

「俺とヒナが付き合ってるってアホちゃうかアイツ!なんで男友達そういう目で見なアカンねん!」
「タキやって本気で思ってないってそんなこと」
「確かにヒナは女子に間違われるくらい可愛いけど、そういうんとちゃうやん!確かに?天然なとこも助けてやりたくなるけど、それは見てられへんからやし」
「天然ちゃうもん」
「いや天然やわ、男でもんって言うんは天然やわ」

そんなことない、もんと続けそうになってヒナは口を噤んだ。拗ねると口をぷくっと膨らませよる。
そういうとこも天然だ。こういう時はあざといだろって?
アホ言えアホ、あのヒナにそんな計算高いことが出来るわけが無い。
だからこそ幼なじみとして、ヒヤヒヤしているのだ。
さっきのいけ好かない男と違ってヒナは生き物にモテる。
老若男女問わず、種族も問わずモテる。幼い頃、道を歩くだけで両手いっぱいのお菓子をもらい、近所のおばちゃんに気にいられ家に招かれそうになった(俺が阻止した)
ただヒナは動物が苦手で子犬でもビビり、きみくんと目をチワワのようにうるうるさせて俺に助けを求めるのだ。
未だにあの目を超える可愛い目に俺は出会った事がない。

「きみくんだって天然やん……」
「は?どこがやねん」
「きみくんこないだ女の子に告白されてたやろ…?」

うわ、当然のように上目遣い。
そういうことするから男なんかに告白されるんだ。

「ヒナやって後輩に告白されとったやんけ、まゆみくんやったっけ?」
「なんで知ってるん!?見てたん?」
「俺の教室の真下でされたからな、いい度胸しとんでアイツ」

宣戦布告か?お前なんかにヒナは勿体ない。
真っ当に女子と恋愛しやがれ。

「その告白された子、なんて断った?」
「『恋人より友人を優先する男なんて嫌でしょ?俺、ヒナが最優先やねん』」
「なんで?」
「え?」
「なんで僕が最優先なん?」
「そ、そりゃどこで天然やらかすか心配やからな」
「なんで心配なん?別にそれできみくんに迷惑かけてへんよ?」
「俺に迷惑とかはどうでもいい。お前がそれで傷ついたり、泣いたりすんのが嫌やねん。そこに真っ先に駆け付けんのは俺でありたいねん」
「なんで?」
「なんでって……さっきからそればっかやな、何でも知りたがる幼稚園児か」

ヒナの目が真っ直ぐ俺を見つめる。なんで?
なんでやろ、大事やから。いつでもお前が頼るのが俺であってほしいから。
この世で1番可愛い目を俺だけに向けてほしいから。

…………そんな『バカみたい』な話、あったな



作者の自我コーナー
お察しの通り作者は西の生まれなので、バカという言葉に馴染みがなく苦戦しました『アホちゃうか』と同じニュアンスで使ってるんですけど合ってるんでしょうか?
攻めが無自覚にフィルター掛けてるだけで実は攻めよりもしっかりしている受けが好きです。

3/22/2024, 5:33:49 PM