葬四季

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燃える葉


僕のおじいちゃんは船に乗るのが好きだった。
釣りが趣味で、その為だけに免許を取るほどだった。
小さい頃はカメノテと呼ばれるそれが
美味しくて大好きだった。

何年も会っていないある年、導かれるように
桜舟へとおじいちゃんは乗っていった。
それは長い眠りであることを僕達に忽然と告げて。

桜舟は散って、水底へと落ちていく。




公園の近くで咲き誇る木々の枯葉が
自転車のカゴに落ちていた。

小学校には紅葉と銀杏が
植えられていたことを思い出した。

さつまいもが乗ったパンを食べていた。

暖かい服装をするようになった。

火葬場に入っていくその棺と写真をふと思い出して、
枯葉の地面を歩む足を止めた。

…そうだ、今日はカメノテを買おう。
それから食べて、あの時の味だと何度も感じよう。
無かったらまた明日探そう。

10/6/2025, 10:50:36 AM