議題がスムーズに片付き雑談モードに入ったミーティングルーム。気軽な筈の一言が部屋の温度を下げていく。
「犬猫の日だっけ。ワンワンにゃんにゃん」
「いい夫婦の日だよね」
「偉大なる北欧の至宝の日!」
「追いポッキーの日、なんちゃって」
今日は何の日だと思う?なんて、明快なフラグのついた質問だったのに、ことごとく回避されてしまった。
去年は祝ってくれたじゃないか。
なぜ覚えてない。今日は僕の誕生日だ。
「……」
「……」
うっかり顔に機嫌を出してしまったに違いない。
スタッフ達の顔が固まっている。
「リーダーってそういうとこがほんと」
「何?ほんと、何?」
「分かりやすくて可愛いですよねお歳のわりに」
パッ、と目の前にブーケを差し出された。
「お誕生日おめでとうございます!」
机の下からケーキの箱もいそいそと取り出される。
皆の顔が固かったのは、笑いをこらえていたせいか。
去年朝イチからお祝いしたら「待ち構えられるのは恥ずかしい」っておっしゃったので、今年はサプライズにしてみたんですよー、なんて種明かしを挟みつつ手際よくキャンドルに火が付けられていく。
「……寿命が縮むから、サプライズも却下で頼む」
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「夫婦」
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所感:
きっと日付に合わせたお題だと思ったので、そのまま横スライディングしてみたら、どこかの上司の誕生パーティーに着地しました。そして北欧の至宝、御年57歳!
11/24/2022, 2:29:12 AM