K

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 君と僕は似ていない筈なのに、何故だか妙に話が合った。好奇心旺盛で話好きな君と話すのはいつだって楽しくて、ずうっと終わりが見えなくて、どれだけ話しても時間が足りないね、と笑い合ったのを今でも覚えている。
 周りからはどうしてそんなに話すことがあるの?と不思議がられたし、なんの話してるかさっぱり分からない、と言われる程独特な会話を繰り広げていたらしいのだけど、二人して終に気付かなかった。それくらい君との会話は僕に馴染んで、不思議なことなんて何もなかった。
 だから、ずうっとそうやって話していられたらなと漠然と思っていたのだ。学年が上がっても、社会人になっても、二人だけに通じる楽しさを共有していけたら。きっと長く共にいても苦にならないから大丈夫、と根拠のない自信を胸に君と向かい合って話していたのは、気付けば随分と遠い昔のことになってしまっている。
 社会人になってからも何度か会ったけれど、職場も離れ、共通の友人とも疎遠になった二人は、いつの間にかお互いの距離も遠くなっていた。もう何年会っていないかも思い出せない。君と何を話していたのかも、君がどんな声をしていたかも、何もかも。
 それでも、ただ楽しかった記憶だけは残っている。君と笑い合った時間の慕わしさも、足りない時間への不満も、話についていけないと顔を顰めた友人の顔に二人して笑ってしまったことも、そんなことばかり時折思い出しては淡く微笑む。
 今はもう消息も分からない君は果たして幸せに暮らしているだろうか。あの時のように話しても話し足りないと思えるような人は、君の側に今いるのだろうか。聞けるものなら聞いてみたい近況を想像して、僕は案外楽しくやっているよ、と頭の中で手を振る君に、こちらからも軽く手を振り返す。
 こっちもだよ。想像の君はそう笑って、僕に向かってにっこりと微笑んだ。それが本当であればいいと願うくらいには好きだった君が、幸いに溢れて生きていたらいいと、僕は窓の外を見ながらひとり夢想している。


お題:大好きな君に

3/5/2023, 5:44:42 AM