ノンネム

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 この世の春はどこへやら。
 四月の半ば。
 桜はだいぶ散って、菜の花やたんぽぽなどの力強そうな(しぶとそう、とも言えるか?)花々が川沿いに伸びる砂利道の脇で咲き乱れていた。

 ……暑い。

 私は昼間の空を見上げながら、川沿い近くのベンチに座り、服の襟をつまんでパタパタと扇ぐ。

 何なんだ今日は、クソ暑い。
 まだ四月だろう? どうしてこんなに暑いんだ。
 外気温は? 30度?
 それもう夏じゃん、ふざけんな。

「あーづーいー……」

 私は呻くように文句を言った。
 そしたらようやく、待ち人たちの声が聞こえてきた。

「ごめーんっ、お待たせー!」
「買ってきたぞー?」
「待ってたよぉー……」

 私は二人からそれぞれ飲み物と譜面を受け取る。
 この譜面は、今年の文化祭で私たちが演奏する曲だ。

 なんだかんだいって、高校生活の三年間、三人で練習してきたなぁ。
 去年も、一昨年も、文化祭で演奏して、すごく楽しかったな。
 今年もきっと、楽しくなる。
 何なら今までよりも、楽しくなる。
 きっと。

 ベンチ脇に置いていた電子キーボードのケースを引っ掴んで、私は立ち上がった。

 空は快晴、絶好の練習日和。
 強めに吹く風が、私の髪を乱雑に撫で上げた時。
 熱で蒸されたような草の香りがした。

「じゃ、練習しよっか」
「おー!」
「おーぅ」



【快晴】

4/13/2026, 4:53:53 PM