旅舟

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題名『肝試し』
(裏テーマ・真夜中)


「本当にやるの?」
「やるよ」
「面白そうじゃん」
「二人は家を抜け出せるの?」
「大丈夫」
「怖いならやめれば」
「やる。三人でやろう!」

 まだ小学生だった僕ら三人組はある遊びを思いついた。
 肝試し大会だ。まぁ大会と言っても3人だけ。
 真夜中に家を抜け出して、団地の近くにある墓地を一周して帰ることを思いついた。

 話の発端はショーちゃんがケンちゃんを怖がりだとからかったからだ。否定するケンちゃんにショーちゃんが証拠を見せろと言い出してフミヤどうしたらいい?って僕に聞いてきたから、冗談のつもりで話したらやることになってしまった。

 僕は怖がりだ。肝試しとかとんでもない。
 冷静で大人の振りはしてるけど夜はトイレに行くのにお母さんを起こして付いてきてもらうくらいの怖がりだ。
 二人もあの様子じゃ相当の怖がりだ。
 でも男同士だと友達でもつい見栄を張ってしまうんだよなぁ。

 約束の時間は真夜中の0時。
 墓地の近くの自動販売機の前だ。

 僕は出かける時に母親に見つかって行けなかったと言い訳まで考えていたけど、みんな早く眠ってスムーズに出れてしまう。
 僕が一番かと思ったらショーちゃんが居た。
「おっす」
「おっす」
少し遅れてケンちゃんも来た。
「おっす」
 みんな懐中電灯を持ってきていた。

「一人一人で行こうぜ」
 ショーちゃんがここでも見栄を張る
「いいぜ、そうしよう」
 ケンちゃんも強がる。
「一人一人じゃ怖がってるかも分かんないよ、待ってる姿を誰かに見られるのもヤバそうだし、三人でサッと回って早く帰ろうよ」
 僕は一人だけは嫌だったので強めに言ったら
「それでいいよ」
「早く終わらそうぜ」
 二人もすぐに賛同した。

 月は満月に近くてそこそこ明るかった。
 墓地は明かりがなくかなり暗かった。
 思ったより背の高い雑草が多くて歩きづらかった。
「墓地の中の外側を回るだけでいいよね」
 僕が確認のためそう言うと二人はうなずくだけだった。

 カサカサっと前の草が鳴った気がした。
 するとケンちゃんが
「佐藤がここでヘビを見たらしい」
 嫌な情報をぶっこんでくる。
 ケンちゃんは良くも悪くも馬鹿で素直な子。
「隣のクラスの高橋、ここでオバケを見たってよ」
 そう言うショーちゃんは負けず嫌い。でも友情に厚い男。
「そこの木の棒で突きながら歩こうよ」
 少し成績の良かった僕は空気が読めるまとめ役を演じていた。

 木の棒をケンちゃんが振り回しながら先頭を歩いていたら、急に立ち止まって身構えて、ある一点を凝視した。
 物凄く光る球体が二つ浮いている。
「にゃーーーー!!!」
 黒猫のような猫?が怒ったような声を出して逃げていった。

 驚いて声を出しそうになったがセーフ、二人を見たら、ほっとしたせいか3人とも笑顔になって笑ってた。

 あと少しで終わり。
 するとショーちゃんが
「大した事なかったな、またやる?」
 そう言った。
「うん、いいよ」
 ケンちゃんもそう答えた。
「じゃ、帰ろうか」
 僕がそう言って三人で墓地を振り返ったら、墓地の奥に灯りが見えた。誰も居ないはずなのにと思って見ていたら、その灯りが、スルスルっとこちらに向かってきた。
「おかしくない?」
「変だね」
「人魂ってことないよね?」
 そんなことを言っていたら、
 それは加速して僕らを追いかけてきた。

「逃げろー!」
 僕らは散り散りに家に逃げ帰った。

 翌日、少し話をしたけど、みんなあの夜のことは話すのを避けていた。

 三人の誰かが、幽霊かもしれないから。



 

5/17/2024, 1:13:54 PM