「待って!!」
後ろから、青年の声がかかった。
彼女が振り返ると、そこには心配した表情の恋人の姿があった。
「どうしたんですか?」
かけられた声に混ざった緊迫感。それに驚きつつも、何にそう思ったのかを、彼女は聞く。
よくよく見てみると、彼の表情が固く、汗が流れていた。
一歩、また一歩と近づき、彼は彼女を抱きしめる。
「え、え!? 本当にどうしたんですか!?」
抱きしめる腕に力が込められる。少しだけ苦しいと感じながらも、何が彼を不安にさせたのか知りたかった。
「溶けて、消えちゃいそう」
ずきり。
と、胸に痛みが走る。
彼は本当にそう思ったのだろう。
彼女に心当たりが、ないでもないのだ。
彼女は安心して欲しくて、彼の身体を強く抱きしめ返した。
「消えません。そばにいます」
「ほんと?」
「はい。これからも、ずっと……」
私にも、未来を信じさせて。
おわり
お題:未来
6/17/2024, 11:29:42 AM