「…37.2℃」
体温計を睨みつけて君は口を尖らせた。
やっぱりな。抱きしめた時熱い気がしたんだ。
「はい、おでかけ中止。そのまま寝てな」
「むー……」
「昔だったら大したことないただの微熱じゃんって軽口のひとつも言ったとこだけど、このご時世そういうわけにもいかないのはわかるだろ」
「わかってるー…。俺がムカついてんのは自分の体のことなのに俺がわかんなくて…もしかしたら移しちゃうかもってこと…」
「まだ濃厚に接触する前だから大丈夫じゃね?」
下ネタ嫌いな君から枕が飛んできて俺は笑う。
「嘘嘘。俺も帰って今日は大人しくしとくよ。ホントは……」
「うん……ホントは……」
こんなご時世じゃなかったら、微熱のある君を置いて帰ったりしない。ぎゅっと抱きしめてふたりでぬくぬく眠りにつくのに。
「……おやすみ。明日には良くなってるさ」
「うん…おやすみ……。ごめんね」
「謝んなよ。寂しくなる」
悪いのは、君の微熱。
▼微熱
11/26/2023, 2:17:59 PM