しいな

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赤毛の歳若い魔法使いは言った。
一緒に祈ろう、一生懸命にお祈りすればきっと伝わる。大丈夫だよ。

目の前には腹を噛みちぎられて、臓器が剥き出しになった、今にも息絶えそうな魔法使いの青年が1人。
普通の人間じゃとっくに死んでいるだろう。
魔法使いで良かったとどこかほっとしている自分もいる。

まがりなりにも自身の身体の一部を預けた魔法使いで、幼い頃に憧れた騎士様。自己犠牲を厭わずに、自分よりもずっと強い存在を守ろうとする馬鹿みたいなお人好し。純度の高い蜂蜜を朝日に照らしたような眼も今閉ざされている。

お前が目が覚めるまでに、後悔するほど祈ってやる。
だから、はやくはやく夏の向日葵みたいな笑顔で名前を呼んでくれなきゃ許さない。

8/3/2023, 12:47:12 PM