風が吹いていた。
いつもの数倍は強い風だった。
そういえば天使だったころは、みんなが強風に乗れるかチャレンジをしてたっけ。
どのくらい風に乗れたとか、どのくらい遠くまで飛べたとかそういう子供の遊び。
風に身体を任していけるとこまでいって、うっかり天界から堕ちたやつも沢山いた。
大人は笑って見過ごして、堕ちても特に気にしなかった。
天使は堕ちても死なないから大丈夫だって、そう言ってた。
今はそんなことできない。羽がないから、そしてそんなことをできないから。
バカみたいなことをしてる暇はない。
迷い子を元の世界に返すことが必要なのだ、今この世界にいるためには。
もう天使じゃない僕が生きるためには。
5/14/2024, 4:23:02 PM