きらきらと星が輝いていた。
瞬きも忘れて見惚れてしまう眩しさ。裸足の足をゆっくりと海へ向けると、思わずといったように息を吐いた。
冬の海は澄みきって、美しい月が海面で冴えた光を滲ませる。黄金の光は溶けて、真上にある月へと続く光の道を浮かび上がらせていた。どこか切なくて、胸の奥が掻き乱される悲哀の色。まるで酸素を求めるように私は海へと駆け出した。裸足の指に冷たい空気にがはいりこむ。久しぶりの走り出しは不格好で、何度も足を取られる。砂浜へと転びそうになって、そんな自分に笑った。
こんなにも無我夢中になったのはいつぶりだろうか。どこまでも遠くへ逃げ出したい欲求が、きっとたまたま、今弾けてしまったのだろう。孤独の色を秘めた月の輝きはそれほどまでに蠱惑的で、私には救いの手に見えたから。消えてしまいたい希死念慮も、生きていたいと気付いてしまう願いも、あの海は泡になって呑み込んでくれる気がした。最期の願いをあの月に託すように、私は瞬きの輝きに足を沈ませる。
/「ただ、必死に走る私。何かから逃げるように」
5/30/2023, 6:01:30 PM