【哀愁を誘う】
11月、もう秋も終盤と言うころか。
頬を撫でる風は、いつの間にか冷たくなっていた。
この間まで暑くて仕方がなかったのに。
ずっと家に居るのもな、と思い、外へ出てきたのは良いものの、特に目的も無くうろうろしている自分が異様に浮いているような気がしてならない。
周りには仕事帰りのくたびれたサラリーマンや塾帰りの子供が家を目指して歩いている。
空はいつの間にかオレンジ色に染まってしまった。
少し肌寒い。
僕は、何をしているんだろう。
ふとした瞬間に、変に冷静になった。
一度思考をめぐらせてしまったら、止めることなんてできっこなかった。
昔は夢に向かって必死に努力をしていたのに。
今はどうだ。僕は今、何も目標がない。
やりたいことも、やらないとだめなこともない。
僕は。僕は。
ぼくはなんのためにいきているの?
子供のような幼い思考に自嘲する。
どれだけ自分を嘲っても、貶しても、変わらないことくらい知っているのに。
でも嗤うしかない。それしか、できない。
「あはは、...いいね、」
ほんと。
もう、いいよ。
秋の夕暮れの空にカラスが鳴いた。
その声が僕を嘲笑っているようで無性に腹が立った。カラスはくるりと空で円を描き去っていった。
何も失くなってしまった空が自分の事を映す鏡のようで、どこか哀愁を誘った。
るあ
11/5/2024, 8:18:27 AM