小鳥遊 桜

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【日の出】


小さい頃、幼なじみと日の出を見ることが好きだった。
私たちの住んでいる場所が、海に近いからっていうのもあって、キラキラ光る海と日の出がとても綺麗で好きだった。

幼なじみとは、よく海で貝殻拾いして、ボンドでダンボールに沢山くっつけてお互いの部屋に飾って遊んでいた。

でも、高校生になってから日の出を見ることが嫌いになった。
理由は、本当に本当に単純。子供っぽい理由。
〝突然、無言で、引越した幼なじみのことを思い出すから。〟
ムカつく。なんで突然何も言わないで引越しするかな。
私なにかした?
しかも、1学期の途中なんですけど。

…まあ、そんなことがあって海と日の出を見るのは嫌いになりました。
それから、砂浜歩くのもちょっと思い出すから、あまり歩かないようにしてました。


それから色々とあって社会人になりました。
やりたい仕事があって、都会での一人暮らしをして、お母さんありがとうって思いながらの生活。
仕事は少しづつだけど慣れてきて、幼なじみの事も忘れて、もうすぐで大晦日だから実家に帰ろうかなぁって思って電車で実家に帰った。


実家で飼い猫と一緒にコタツでゴロゴロして、大晦日特別番組を見ていたらチャイムの音がした。
「ごめんけど、母さん手が離せないから出てくれる?」
そう言われて仕方なく、のそのそとコタツから出て、玄関に向かった。

出ると近所のおばさま。
お喋り好きだから苦手だけど、今日だけだし。と思ってうんうんと相槌をしていると
「そういえば、あなたあの子と仲良しだったわよね〜。今は帰ってきてるみたいだから行ってみたらどうかしら?あの子は……」
そう言っておばさまの顔が、しまった。っていう顔をした気がした。けれどすぐいつものお喋りに戻った。
すごく、気になった。もうアイツの事なんて、どうでもいいって思ってたけど…。

おばさまのお喋りが終わってから、親に出かける事を伝えて、幼なじみの家に行った。
なんとなく、走っていた。

結果は、家に帰ってきてるけど今は出かけていると、幼なじみのお母さんから言われた。
場所は言われなくても、わかった。
あの時、あの場所で遊んだ、海。

行ってみても、結局、居なかった。
ずっとずっと探したけど、居なかった。
名前を呼んでも、家にもう一度行っても。
どこにも、居なかった。

小さい頃に幼なじみと見た、キラキラ光る海と日の出。
あれを、いつか一緒に仲良くなって、見たかった事。

目の前に広がる海と綺麗な日の出を見て思い出した。

1/3/2023, 10:28:15 AM