黎明を、白鴉が飛んでいく。
島々を渡り、北欧の半島につくと、海を見渡した。
黒々とした海は、岩礁にざぶんざぶんと玉のような
波が飛ばす。
どこまでも、続く広い海。
そして、ケルトの神話の、太陽を背負った十字架は、生い茂った岸壁の上の墓地に、白い百合の花を添えていた。
生い茂った野薔薇は、茨と絡み合い、峠の魔女は酷く咳をした。
この墓地は、かつては双璧と呼ばれた、友人のものである。
私ももう年老いた。
後は死ぬのを待つだけだ。
最近の占いは、ほぼ自分のことを占うことはない。
もう、分かっているから。
魔女の死生観は、複雑であった。魂は、死の山へたどり着くが、永遠にその場に留まるわけではない。
魂を運ぶのは、悪魔であるとも言われているが、きっと彼女はそうではないと感じていた。
野に咲く花が、空を飛ぶ白鴉が、母なる海が、彼女の魂を荒野に解き放つであろう。
風は種を運び、人々を巡り巡って癒す。
そうして、雨になりまた飲水となって人の一部になるのだと。
9/13/2023, 10:18:00 AM