せつか

Open App

花の芽吹きと微睡みを促すあたたかさ。
大地を枯らし焼き尽くす苛烈さ。
どちらも太陽の真実だ。
私はそのどちらも、好きで好きで、たまらなかったんだ。

穏やかに微笑む彼のあたたかさに見惚れた。
怒りと憎悪に燃える瞳に息を飲んだ。
どちらも彼の真実で、彼の感情が自分に向けられていることに、私は昂揚したんだ。

イカロスの物語を知っているかい?
イカロスはそうとは知らずに太陽に近付き過ぎて堕ちてしまったが、私は·····知っていたんだ。
太陽に近付き過ぎるとどうなるか。
あの熱を間近で感じるとどうなってしまうのか。
それでも·····彼の近くにいたいと思ってしまった。

私は傲慢で、強欲だった。
自分は彼も、彼女も、あの方も、失わずに済むと思い込んでいたんだ。

うん。今になって気付いたんだよ。だから――。

「もう、会わないんだ。そう言って、あの人は湖に帰っていきました」

少女の小さな呟きは、誰に聞かれるともなく白い床にぽつんと落ちて、やがて消えていった。

END


「太陽のような」

2/22/2024, 4:14:47 PM