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「好きだよ、君のこと。いいよ。」
ダメ元で、でも自分の感情に蹴りをつけたくて
もうこのままでいるのが辛くて仕方がなかったからやけくそになって告白したのにいいよって帰ってきた。

すごく嬉しかった。

好きな人が自分の恋人になってくれた。
後ろからふわっと包み込んでくれて話すのが新鮮でドキドキした。だってこんなの初めてで、だから仕方がないことで
どうしようもなく表情筋は緩みっぱなしで
顔面の筋肉が溶けてしまったんじゃないかなと思った

何話していいのか分からなくなってしまって、
「今日!いい天気だったね、夕焼け綺麗だね」
なんてど定番の話をする
「確かに、でも暑いからな〜、夏は空綺麗だけど暑いから嫌い」
「私も、冬の方が好き。雪だるま作りたい」
「お子ちゃま笑」
「そんなこと言う子には一緒に作ってあげません!」
こうやってずっと笑いあっていたかった。
友達じゃ作れない距離感があることが嬉しかった。

でも、ひとつ頭の中に疑問が過った。
「好きな人と付き合えたよ」
何時だかそう言われた気がした。
あれ、あの人とはどうなったの?
心臓が嫌な鼓動を掻き立てた
聞く?聞かない?でも今聞かなかったら今後もっと傷つく
「ねえ、あのことどうなったの…?」
そう少しふりかえって聞くと、顔を逸らして
「あ〜、まだ付き合ってるよ」
と言われた。

これまでに無いくらい心臓がギュッてした。
苦しくなった
やっぱり私にばっかり恋愛の神様は意地悪をするんだ
好きな人と付き合えたと思ったら、これか
これが初恋のはずで、初めてできたパートナーのはずなのに何故か夢で好きな人と付き合えても他に好きな人が出来たと言われて別れる夢を見続けていた。
起きてから夢だとわかっているのに何日も、何週間も引きづってしまう程に辛かった

だれにもこんな思いはして欲しくなかった
このまま私がここにいたら、その子を傷つけてしまう

気がつくと、踏切の前にいた。
頭の中に踏切の音が鳴り響く。
音には合わないけれど右左と規則正しく移ろう赤色が目に入る。
空を見上げると、綺麗な藍色をしていた。
この景色も、初めてのはずなのに初めてじゃないように思えた
ずっと繰り返しているきがする
けたたましく鳴り響く警笛の音と共に私の記憶はここで終わった。

誰よりも彼のことが好きだった自信があった。
ただ、自分の気持ちを伝える勇気は誰よりもなかった
隣を歩けなくなってしまうことが嫌だったけど伝えたら友達ですら居られなくなってしまうのが嫌だった
やっと、伝えられたと思ったのに

来世は、私も今度こそ好きな人と結ばれて幸せになれますように。

6/1/2023, 4:50:12 AM