友達
『友達』という言葉を君はよく口にする。
「友達と集まる」「友達とご飯に行く」「友達と飲んできた」
友達という枠組みのハードルが低すぎるんじゃないかと思う時もあるけれど、自分の友達に対するハードルが高いだけかと思い直す。自分の中では友達と呼べる人はあまりいなくて、知り合いが大半で友達は仲間と同義でそこの区別はハッキリしている。君の中ではちょっと仲の良い知り合いは友達になるようで、数回一緒に飲んだだけの人とご飯に行ってくると言って出掛けたりする。社交的と言えばその通りなのだが、もう少し警戒心があってもいいのではと密かに思っていたりもする。
自分の中で友達として紹介できる人は3人で、その3人は既に君に紹介済み。理由としては、自分と関わって生きていく上で自分に何かあった時はこの人達を頼ってね、という家族紹介的な意味とこの人達は君の味方だよと言いたかったから。自分が信頼している人達に紹介するという意味を考えてねというちょっとした脅しもある。別に仲良くなってほしいとかは思っていない。あくまでもこの人達は信用して良いという安心材料だ。
君は逆で「あなたと結婚したら今の友達とはほぼほぼ縁を切る。紹介したら面倒なことになるし、あなたにとってプラスになることはない」と言って友達とは一切会わせてもらえない。じゃあ会いたいかと言われるとそういうわけではないから、君が会わせたくないならそれでいいよと言うだけだ。
そんな君が「この人とは今仲の良い友達の状態だから」と他の人に説明しているのを聞いた時、少しだけ心に陰りが生じた。友達なのは間違いじゃない。付き合っているわけではないから恋人ではないし、結婚する可能性があるだけで婚約者と呼べるほど明確な関係性でもない。だから友達。それは分かる。でも君が友達と呼んでいる人達と同等なのかと少しだけ、ほんの少しだけ落胆したのだ。諦めてしまおうかと。
でもそれも4ヶ月ほど前の話で、最近の君は「友達だけど友達じゃなくて特別な友達」と哲学みたいなことを言う。君の中で初めての関係性の人間で、どうにも腑に落ちる言葉が見付からないらしい。言いたいことは分かる。じゃあ恋人かと言われると自分もしっくりは来ないから、まぁ言うなれば飼い主ですと言うことになるわけで。
もしもいつかの未来で君の中の『友達』という枠を抜けることが出来たなら、きっとすごく嬉しくなって自分は友達に自慢するかもしれない。
10/25/2024, 1:13:48 PM