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好きな人が虹色の鉛筆を持っていた。

描けば描くたび色が変わる鉛筆。
小学生の憧れの品だ。

彼が学校で色々ふざけたものを描いて笑っていたとき、私はすぐに母親に買ってもらおう、と思った。

休日、母は文房具屋にて買ってくれた。
私は目を輝かせ、いつまでたっても描かずにみつめていた、と母が教えてくれた。

そして夕方、庭に出る。

私は放課後、庭でスケッチをしていた。
私の町は田舎で虫も多かったが、何も気にしていなかった。それが毎日の楽しみでもあった。

畑のかかし、自分の家、母の笑顔。

下手だが、楽しそうな絵が描いてあるスケッチブックは今でも私の宝物だ。

そしてあの日は橋を描こうと思った。
庭から見える、古びた橋。

買ってもらった、虹色の鉛筆で。

線を引く、その時。
彼がいた。

彼の友達何人かと、あの橋の上で何かをしている。

とても気になった。

少しくらい家から出ても大丈夫だろう。
彼は何をしているんだろう?

そう思って橋のほうに近づいた。
彼に気づかれないように。

そうして彼らの姿がはっきりし、何をしているかよくわかった。
彼らは橋の上で戦隊モノの決めポーズをとっていた。

彼は奇妙なポーズで必殺技らしいものを放って、彼の友達とごっこ遊びをしていた。

私は吹き出しそうになるのを必死にこらえていた。
そして橋にもっと近づいたが、彼らは夢中になっているのか全く気がついていなかった。

よし、描くか。

その日はいつもより筆が乗った。

──完成。
橋と、彼ら。

虹色の鉛筆で描いたそれは、今でも最高傑作だ。
しかし今見ると彼の顔だけ大きく、描きこんでいるので少し恥ずかしくなる。

後日、彼らにその絵を見せた。
彼は大喜びしてくれた。
そして放課後、彼らは私を橋の上までつれていってくれた。

彼と一緒に決めポーズをしたあの日は、絶対に忘れられない。

そのあと門限が過ぎ、先生に見つかり叱られた思い出も、この一つの絵に刻まれている。

9/21/2025, 11:25:41 AM