いつも月とともにあらわれる彼は、一年で最も美しいと言われる中秋の名月の日には姿を見せなかった。一応メールを打ったものの、その晩は返事がなかった。せっかくお団子やら里芋やら準備してみたのに、結局一人で空を見上げていた。夜が更けるのにはずいぶんと時間がかかりそうだったので、酒を持ってきて窓辺で彼について考えることにした。
晴れた夜には必ずやってきて、長くなると一晩中語り合う。そしてまたフラっと帰っていくのである。よく考えると名前しか知らないような男だ。いや、好きな酒のつまみも知っている。言ってみればただそれだけだが、やはりあのように美しい月夜にはススキのうわさ話なんかしながら、彼と酒をのみたいと思った。
11/11/2024, 6:21:48 AM